
ECD「THREE WISEMONKEYS」
(P-VINE RECORDS/Final Junky)
日本のヒップホップミュージシャン ECDのアルバムタイトルが意味するのは「見ざる、言わざる、聞かざる」。「ECDさんにどういうアルバムなのか聞いてみましたが、いつものことながら特に答えはなかった(笑)」と話すのは、これまでもアルバムデザインを手がけている石黒景太さん。「ECDさんの活動についてはよく知っているので、いまの時点でそこにデザインでプラスできるものは何かと、いつも自分なりに考えます」。
顔いっぱいに広がるマスクをつけ、キャップで耳を塞ぐ女性の姿を、アーティスト 黒川知希さんに描いてもらった。YouTubeの再生マークも手描きで、「メディア越しに見ている」イメージにしたかったという。「タイトルを聞いたとき、現実を見なかったり、聞かなかったり、ときには口を閉ざしてしまう社会に対して、ECDさんが警鐘を鳴らしているように感じ、緊張感のあるビジュアルにしたいと思いました」。黒川さんは固めの毛筆を用い、絵具をそのままこすりつけてかすれの効果を得る方法で描いている。その粗いタッチが、CD全体にどこか不穏な空気をまとわせている。

舞城王太郎『深夜百太郎 入口』『深夜百太郎 出口』
(ナナロク社)
小説家 舞城王太郎の新作『深夜百太郎』が刊行された。これは2015年の5月~8月の100日間にわたり、Twitter上で発表された“百物語”である。奇数話は調布、偶数話は福井県西暁町を舞台とし、それぞれの語り手はすべて異なる一話完結の物語だ。さらにTwitter公開時に、物語と共にアップされた写真家 佐内正史さんの写真も、本書には100枚収められている。「編集担当の方から、価格を1500円にしたいというお話があり、それを実現するためにどういうことができるのか、考えていきました」と、デザインを手がけた祖父江慎さん。
まず表紙とカバーはスミ1色と決め、帯のみ色を使うことにした。祖父江さんは、この本でいくつかの新しい試みをしている。その一つが、佐内さんの写真をモノクロにしたこと。独特な空気や世界観で、美しい色のイメージが強い佐内さんだが …