電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。さまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛けあわせることで、触って感じる新しいブックカバーを提案していく。
星のきらめきと手触りを楽しむ
きらきらと星が輝いている。Bushitsuのアートディレクター/グラフィックデザイナーの橋本祐治さんが制作したのは、年末やクリスマスシーズンのきらびやかさに似合うブックジャケット。メタリックパール加工が両面に施され、星の輝きを思わせるきらびやかなファインペーパー「スタードリーム-FS」を使ってデザインした。
「スタードリームが持っている輝きをさらに際立たせるような、視覚はもちろん、きらきらした密度が触覚でも伝えられるデザインをぼんやりと考えていました。紙の名称にある星(スター)をジャケット全体に散りばめることを思い付き、星型ができるモジュールを作りました。通常、モジュール自体は表面化するものではないですが、エンボス加工であえて存在感を出し、手触りで楽しんでもらえるようにしました」。
エンボスの具合は強いと見た目に影響し過ぎてしまい、弱いと触感が無くなってしまう。美箔ワタナベさんのアドバイスのもと、最適な線幅の太さを探った。「コーラル」「ローズクォーツ」など新色のラインナップの中から最も粒子感が強く表れて見える「カッパー」を選択。モジュールの図形から星、ハート、本、BOOK(文字)の4つに銀箔を施している。躍動感のあるデザインは、スタードリームが持つメタリック感と銀箔が光の反射でさまざまな表情を見せる(金色の星はオフセット印刷)。
「今回スタードリームを初めて使いましたが、良い意味で個性が強い紙で、だけどその個性を上手く生かせれば、印刷・加工だけでは表現できないとても効果的で存在感のあるものができあがると感じました。今後もきらびやかな効果やモノとしての存在感を出したい時などに合わせて使っていきたいと思います」。タイトルはBook Dream。きらきらと本を読む楽しさが外装からも表れる。夢のような本の世界を漂ってもらいたいと語った。
橋本祐治(はしもと・ゆうじ)
1976年横浜生まれ。2000年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。アキタ・デザイン・カンを経て、2013年Bushitsu 設立。ブランディング、CI・VI、装丁、パッケージ、サイン計画などグラフィックデザインを軸として活動。