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話題の広告・商品の 企画書&ラフを公開

可能性の種をまくことから始まったブランディング

王子サーモン銀座店

1967年に北海道苫小牧で誕生したサーモン専門店「王子サーモン」。創業間もない頃に、天皇陛下ご一家の会食に献上され、イギリス・エリザベス女王歓迎晩餐会他でも採用されるなど、スモークサーモンのトップブランドとして知られている。そんな同社がサン・アドとともにリブランディングに取り組み、今年4月銀座店が新たな形に生まれ変わった。

食べることが好きな人でチーム結成

王子サーモンからサン・アドに相談があったのは、2014年の夏。サン・アドグラフィックデザイナー 小林昇太さんの友人 を通して、王子サーモン銀座店店長から声がかかった。当初は銀座店のリニューアルに合わせ、パッケージをリニューアルしたいという話だった。小林さんはサン・アドエグゼクティブプロデューサー 坂東美和子さんと共に王子サーモンへ出向き、詳しい話を聞いてみると、いくつかの課題が見えてきた。「日本は鮭がとれる数少ない国の1つでありながら、日本人のほとんどが鮭の種類やおいしい食べ方を知らないこと。また、王子サーモンのイメージを統一したいというお話もありました」(坂東さん)。課題はあるものの、何から手をつけてよいかわからない、といった状況だった。

 坂東さんと小林さんは、これまでの経験からパッケージだけではなく、ブランディングから考える必要があると判断。翌年の春に銀座店のリニューアルオープンを目指すという同社の意向を叶えるために、まずはサン・アドからブランディングに向けた提案をしようと考えた。「わずか8ヶ月という期間で形にしなければならず、そのためにはサン・アド内のチームワークが大事になる」と考えた坂東さんは、これまで企業のブランド構築の経験があり、さらに食べることやお酒を飲むことが好きで、食べ物にこだわりのある人に声をかけた。坂東さんと小林さんほか、食に対する価値観が近いと選ばれたのは、クリエイティブディレクター 笠原千昌さん、アートディレクター 福地掌さん、コピーライター 公庄仁さん、プロデューサー 山西栄輔さんだ。

01~03 4月末に銀座にオープン。入り口から飛び出したサーモンが目印だ。

クライアントの要望を整理した企画書

今回、サン・アドのチームが何よりも大切にしたことは、王子サーモンとのコミュニケーションだ。同社にとってこうした取り組みは初めてのことであり、ブランドをより深く理解するためにも、直接会って話を聞くというプロセスは欠かせなかった。初回のプレゼンを前に、坂東さんと笠原さんは王子サーモン会長に会いに行き、リニューアルの意向を直接確認。そのとき聞いた話をもとに社内で議論を重ね、50枚以上にわたる企画書を制作した。初回の企画書は、クライアントの要望を整理してまとめたオリエンシートのような内容だ。たとえば「日本人は鮭を好んで食べるのに、種類の違いも本当においしい食べ方も知らない」という課題に対しては、「お肉屋さんのような魚屋さん」というテーマで、調理法や食べ方も提案するような店づくりを提案。店舗のイメージ写真などの資料を見せながら説明した。「可能性の種をまいて、クライアントの反応に合わせて絞り込んでいきました。まずは信頼していただけるように、私たちと組めばこういうことが実現できる可能性があります、とプレゼンしました。サン・アドの自己紹介のような機会だったとも言えます」(笠原さん)。

初回のプレゼン後に、サン・アドは正式に仕事の依頼を受ける。そして、2回目となる9月のプレゼンには、UIDの建築家前田圭介さんと一緒にブランディングを進めていきたいと提案した。サン・アドと前田さんとは明太子の『やまや天神本店リニューアル』で一緒に仕事をした間柄。やまやでの成功体験から、商品やパッケージを美しく見せるためには、建築の在り方も重要であると考え、前田さんを推薦したのである。「私たちの設計は建物の外側・内側をつくるだけでなく、クライアントと時間を共有してインテリアまで提案する空間づくりを心がけています。サン・アドと共にお店づくり・ブランドづくりをすることで、ロゴやパッケージ、商品名など、建築家が従来関わることが難しかった部分にまでメッセージを込めることができると考えました」(前田さん)。

2回目の企画書は、3部構成に仕上げた。1部がブランドのコンセプトやロゴ、カラーについて。2部が新しい銀座店の考え方、3部は前田さんが自ら店舗設計についてプレゼンした。ロゴマークは、長年にわたって使用してきたデザインを基に、デザインをブラッシュアップ。「2回目のプレゼンでは…

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