日本館の最終展示であり、日本館の総括とも言えるシーン5「LIVE PERFORMANCE THEATER」を制作したのは、ライゾマティクスだ。コンセプトは「食卓から始まる人びとの想い、絆。日本食は世界をつなぐ『地球食』」である。
体験ありきのシアター
ライゾマティクス代表 齋藤精一さんは「日本の食をテーマにシアターをつくってほしい」とオファーを受けた際、「ライゾマらしい“体験ありきのシアター”にしたかった。みんな黙って座って見ているのではなく、一緒に観た人達が国を超えて仲良くなるようなコンテンツにしたいと思いました」と語る。
早速、過去の万博について調べていくと、齋藤さんはあることに気がつく。それは「大阪万博で初めて外国人と話をした」、「斬新なデザインを目にした」など、“万博=初体験をする場所”という新たなとらえ方だった。「万博で初体験をした人がインターナショナルやデザインに目覚めて、今の日本をつくっているといっても過言ではない。万博の展示には、それぐらいのインパクトが必要だと考えました」。これらの条件を満たすものとして、最終的に辿り着いた形は「日本の食卓」。食卓であれば静かに座っている必要はない。西洋から入ってきた料理をアレンジしたもの、さまざまな食材が入った1つの鍋をみんなでつつく文化など、食卓を通じて日本館のテーマ「Harmonious Diversity―共存する多様性―」も示すことができると考えた。
タイトルは「Future Restaurant」。これは来場者参加型のエンタテインメント・シアターだ。弧を描くように配置されたテーブルは、6人掛け席と車いす対応の2人掛け席の2種類。156人収容できる。テーブルマットの代わりにディスプレイと赤外線センサーが設置されており、手元の箸で画面をタッチして操作する。センターステージでは進行役を担う着物に身を包んだ日本人女性とギャルソンのイタリア人男性がキャストとしてショーを盛り上げていく。
全員が席につくと、まずは箸の練習から始まる。と言っても、箸を持って2秒間ディスプレイの中の食材をタッチするという簡単なものだ。タッチした食材はテーブルの中央にある大きなディスプレイへと集まり、一番早くタッチ操作を完了できたテーブルをキャストが紹介する。「イタリア人はとてもインタラクティブな人たち。日本人と違い、知らない人にもどんどん話しかける。だから、こういう隙をつくると盛り上がります」。実際に拍手とともにワーッと大歓声があがり、これによって、この空間の中で全員が1つに繋がったことを体感できる。
ここでキャストが「ちょっと会場が暗いから明るくしましょう」と言うと、天井のライトから目の前のディスプレイまで一瞬にして明るくなる。これらは約200台のPCが同期しており、すべてが連動している。
続いて、参加者はディスプレイに現れる複数の質問に答えていく。どこの国から来たか?好きな季節は?肉・魚・野菜のどれが好きか?全員の解答が集まると …