One Show レポート
キーワードは
イノベーションとジェンダー
5月8日NYのLincoln Centerで開催されたOne Show2015のセレモニー。今年も世界各国からの参加者で大きな盛り上がりを見せた。このOne Showのセレモニーへの参加は初めての経験であったが、それはエンターテインメントの街ニューヨークらしく、全体を通して何かひとつの“ショー”を観ているような一日だった。
OneShowのセレモニーは、受賞作品をすべて紹介するのではなく、Gold以上の作品のみを壇上で表彰するスタイルだが、受賞作品を次々に紹介していくカンヌのそれとは違い、合間に司会者のジョークを交えたトークを楽しみながら、その中で受賞作品を楽しむというような実にNYらしいエンターテインメント性にあふれたイベントであった。
しかしそこで表彰されたのは、昨年の主要アワードで受賞しているお馴染みの作品から、これから開催されるカンヌライオンズ等のアワードで“今年の顔”となるであろう骨太な作品たちばかりであった。
今年のOne Showはデザイン、フィルム、ダイレクト、インタラクティブ、ソーシャルメディア、UX/UIなど全13部門で構成されている。トップバッターとして発表されたのはIntellectual Property、UX/UI部門。他のアワードではあまり見かけない部門であるが、これらをデザイン部門やインタラクティブ部門などと独立させているのは、OneShowのひとつの特徴と言える。

この部門において気になったのは、汚染された食品が溢れる中国において、水や食べ物の安全性をデータでたしかめることのできる“箸”を開発した、百度の『Baidu Kuaisou』や、サメによる事故が多発するオーストラリアの海岸において、海中でサメを感知すると衛星を通じてビーチに警報を鳴らすシステムを開発した、Optusの『Cleverbuoy』(03)など、スタートアップのようにエージェンシーとクライアントが共同でテクノロジーシステムを開発したイノベーション業務の受賞が目立った。

私たちのチーム(02)の『Eye Play the Piano』も、このIntellectual Property 部門での受賞だったのだが、セレモニー終了後に『Cleverbuoy』で受賞をしていたM&C Saatchi/Sydneyのディレクターから、「VRというデバイスの可能性をクリエイティブが拡大していて、クライアントとエージェンシーの境目がもはやわからないところが素晴らしいね」という言葉を受けた。“クライアントとエージェンシーの境目がない”という概念は、イノベーション業務が特に集まるこの部門においてはキーワードかもしれない。

またOne Showにおいても花形であるFilm部門等の映像作品は、全体としてアメリカらしい、シニカルでジョークが効いているものが多かったように思えた。昨年のカンヌでもGoldを獲得していた、Old Spiceの『Dadsong』やHBO GOの『Awkward Family Viewing』などの常連から、Bestof Show にも選ばれたHealthcare.govの『Between Two Ferns』(04)はまさにアメリカならではのブラックユーモアにあふれたショーフィルムだ。
また会場でも大人気であった、YouTube広告のスキップされる前の時間に全ての要素を言い終えてしまう、GEICO(アメリカの自動車保険会社)の『UnskippableAd』シリーズ(05)は、Film部門もはじめInteractive部門においてもGoldを受賞していた。

ちなみに余談ではあるが、ONE SHOW セレモニーの1つの特徴として、受賞者が壇上でおこなう「6秒スピーチ」というものがある。受賞の喜びやチーム・クライアントへの感謝の意を述べたり ...