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2015年注目のクリエイティブチーム

「映像の作り方」を変えていく

エルロイ

演出/プロデューサーの和田篤司さんが2012年に設立した映像制作会社エルロイ。少数精鋭の次世代映像制作会社の先駆けとして広告に限らず、映画、ドラマ、テレビ番組など多様なジャンルで実績を重ねている。

01(上段左から)蔵原健之さん、小島伸夫さん、勝村紀昌さん、丸山拓之さん、伊藤瑞希さん、広浦直人さん、中島友彦さん、山崎悠樹さん。
(下段左から)土屋哲彦さん、松田健さん、和田篤司さん、中東俊典さん、髙橋一己さん。

一人ひとりの担当領域を広げる

映画などの長尺の領域においてのノウハウをCMや企業PR映像の現場にフィードバックすることで、質の高い映像制作と効率化を図ってきたエルロイ。社名の由来は『L.A.コンフィデンシャル』などで知られる米国文学界の魔犬ジェイムズ・エルロイから。ジェイムズ・エルロイのように独創的かつ圧倒的な描写ができる会社でありたいとして名付けたという。

現在スタッフは15人。名刺に記載された複数の肩書きが目を引く。撮影/照明、演出/プロデューサー、制作/プランナー、エディター/ DIT、など。「職能というのはすべて連動しているんです。カメラアングルを決めるには頭の中で編集作業が出来る必要があり、編集のカット割りにはアングルを切るスキルが求められる。制作は企画を奥深くまで理解する必要があり、ディレクターは予算とセットで演出を考える。媒体の多様化などにより映像制作費が下がっていく中、クオリティを下げないために一人ひとりの担当領域を広げるという考え方が重要なんです」(和田さん)。スタークリエイターが一人で支えるような会社ではないため、総合力で脇を締めた仕事をするという意識が強い。一人ひとりがブランド化するというよりも会社として質の高い映像サービスを提供する。「ブラッド・ピットが実在のGMに扮した映画『マネーボール』の統計学的手法に少し近い考えです。一芸に秀でたものを集め、適材適所に役割を持つことで、補い合い連携し少しでも勝率を上げていきます」(和田さん)。

予算の面だけではなく、ハリウッドのプロダクションに見られるような、ディレクターがプロデューサーを兼ね、予算と理想を両立させ、真にオリジナリティを持つ企画を成立させる。そんな状況を、自社で作り上げたいという思いも見えてくる。

05 Canon EOS 7D Mark Ⅱ EOSmovie「Cello」

映画の「組」のような制作体制

同社最大の強みは、企画から納品まで社内で一貫制作できるところにある。一般的な映像制作会社は演出、カメラマン、撮影機材、ポスプロなどを外注しているが、それでは映像のプロであるべき制作会社にノウハウが残らない。これはプロダクションの構造的な問題だと和田さんは感じていた。同社は昔の映画の「組」のような制作体制を目指しており、同じスタッフで制作を行うことでノウハウが蓄積され、今回より次、次よりその次と能力が更新され、高いパフォーマンスが継続できるチームを構築している。たとえば、コンテもコンテ会社に発注せずに自社でつくり、CGも作れる編集部や、所有機材を熟知した撮影部が在籍している。また、4Kカメラをはじめとする高精細の撮影機材を自社で持ち、録音機材や照明機材も導入している。

ひとつの案件が決まると、納品から逆算し、プロデューサー、演出、カメラマン、助手、制作、エディターらでチームを組成する。その全員が1フロアに集っているため、企画段階でエディターからアイデアが出たり、オフライン編集に対してカメラマンから意見が出たりと、全員が制作工程を共有する環境が自然と整っている。制作部、撮影部、編集部の各部がデスクを並べ、毎日顔をあわせ、課題などについて話しあっているため、各案件の制作をよりシームレスに行うことができる。

たとえば、キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 7D markⅡ」のプロモーションムービーでもエルロイの制作体制の強みが生かされている。チェリストと、特殊メイクを施した3人のダンサーが出演する「セロ弾きのゴーシュ」をモチーフにした幻想的な映像で、作品の世界観を守りつつ、新型カメラのオートフォーカス機能の能力を描くことにこだわった。企画段階でカメラマンがコンテに対して、レンズの特性などから逆算したアイデアを盛り込み、担当エディターが撮影現場に立ち会い映像の繋がりを計算することで、編集の精度を上げた。

4K映像での制作を得意としているのも同社の強みだ。4K撮影の先駆けであるRED EPICを所有し、4Kでの映像制作を日常的に行っているため編集機材も完備、ワークフローも成熟している。「最高の映像を作るために、最高の環境を用意し、最高の映像制作チームになることを目標に、日々映像制作を行っていきます」(和田さん)。人材育成がチームの根本であるという同社の理念は、日本の映像制作のカタチを変える礎となるだろう。

02 Panasonic LUMIX G6「 Feel Awed」

03 GREE「ソチ五輪日本代表応援ムービー」

04 劇場用映画「アバター」

06 シャープ「AQUOS WEB ムービー」

07 フジテレビドラマ「厄束」

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