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EDITOR'S CHECK

クリープハイプ「エロ/二十九、三十」、カゴメ「つぶより野菜」ほか

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クリープハイプ「エロ/二十九、三十」

(ユニバーサルミュージック)

○AD/中尾祐輝
○企画/阿部広太郎
○撮影/森栄喜

クリープハイプの新作「エロ/二十九、三十」は、レコード会社移籍後の第二弾シングル。初回限定盤、通常盤ともに男女の顔と身体の一部を写しているだけにもかかわらず、なんともいえない空気が漂ってくる。「今回の楽曲とクリープハイプというバンドのあり方からジャケットを考える上で大切にした言葉は色気、切なさ、若さ、エロ、男、夏、女、空虚感」と話すのは、移籍後、クリープハイプのブランディングを手がけているコピーライター阿部広太郎さんとアートディレクター中尾祐輝さん。

「これらの言葉から湧きあがってきたビジュアルイメージは、生々しいくらいの男女の肌でした」。しかし、これはともすればバンドのイメージを崩しかねないモチーフ。そこで「エロとは色気である」ととらえ、それを映し出してくれる人として、木村伊兵衛賞を受賞した写真家 森栄喜さんに撮影を依頼した。CD ジャケットのみならず、森さんがメンバーを撮りおろし、一部店舗限定の特典として写真集『「エロ」本』を制作。ファンにとっては垂涎の的であるが、森さんの新作としても注目すべき作品集に仕上がった。

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広報ツール

(めじろ台霊園)

○AD/前田豊
○I/吉實恵

封筒に書かれているのは、「お墓と向合う」というコピーと、明るい色で彩られたお墓のイラスト――。これは、東京・八王子にあるめじろ台霊園の広報ツールだ。同霊園では深谷石材店と協力し、いまの時代に適した墓石をつくるべく、「お墓プロジェクト」を立ち上げた。そして今年、インテリアデザイナー 中村隆秋さんがデザインした角の丸いお墓の販売を開始したのである。

同じくプロジェクトに参加しているアートディレクター 前田豊さんは、デザインの切り口から新しいお墓を話題にしていきたいと考え、インテリア・デザイン関連メディアに向けた広報ツールを提案した。「通常、お墓の広告はネガティブな印象になりがちですが、そうではなく、堂々と胸を張って語れるものにしたいと思いました。特に従来とは違うメディアに送るので、目に留めてもらうインパクトを重視し、あえてお墓をモチーフとしました」。当初からイラストを想定し、イラストレーター吉實恵さんに明るく、美しいお墓の絵を依頼した。同時にこのイラストを使った折込チラシも制作。近隣地区で配布したところ、従来にはない反響を得ている。

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「新訳『ドラえもん』」

(漫画原作/藤子・F・不二雄、文/佐々木宏、小学館)

○AD/佐野研二郎
○D/橋本尚人

映画「STAND BY ME ドラえもん」公開に合わせて発売された書籍「新訳『ドラえもん』」。これは映画のプロモーションのクリエイティブディレクターを務めた佐々木宏さんが企画、編集、文章を手がけた映画の原作本である。青と赤と白、そして黄色を組み合わせたデザインは、どこから見ても「ドラえもん」。ブックデザインは、映画のプロモーションのアートディレクターでもある佐野研二郎さんが手がけた。

本書は映画脚本のもととなった藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』作品7本を完全収録。そして各作品の間には、ドラえもんがのび太には話せなかったことを文章で綴っている。通常のコミックとは違う構成であることから、本の顔つきを変えたいと考えた。そして、「映画を見た人はもちろん、まだ映画を見ていない人が見るきっかけになるものにしたい。特に『ドラえもん』を卒業してしまった人にも、もう一度手にしてほしい」。そんな思いから、佐野さんが考えたのは「“ドラえもん”らしさを追求したブックデザイン」だ。「ドラえもんの楽しさは、やはりひみつ道具にあります。その楽しさやサプライズをこの本でも表現したいと思いました」と話す。

本には、各所にドラえもんならではの遊び心が施されている。前書きや目次の文章中にはキャラクターの顔(佐々木さんの顔も)が入り、本に挟まれた栞には竹コプターをデザイン。本の上部に挟むと、竹コプターが飛んでいるような趣になる。

そして、本の小口を前からパラパラめくるとドラえもんが、後ろからめくるとのび太の顔が現れる。これはページの端に2mm程度、絵をずらしながら印刷することで実現している。「アナログな手法ですが、ドラえもんならではのひみつ道具らしさが出せたかなと思っています」。

カバーや表紙の配色はドラえもんらしさを出しながらも、電車や会社で読んでも恥ずかしくないよう、上質さを感じさせるデザインに。「読み終わった後も、ものとしてずっととっておきたくなる本になればうれしいです」。

映画は8月8日に公開。オープニング後の週末2日間で、55万人を超える動員となっている。

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「つぶより野菜」

(カゴメ)

○AD/遠藤礼奈
○C/こやま淳子
○D/菊井賢治、高橋彩
○I/門脇貴○撮影/島村朋子

カゴメの野菜ジュース「つぶより野菜」は、カゴメが“80年間つくりたかった理想のジュース”。素材にはすべて国産野菜を使い、独自の加工技術で野菜ならではのおいしさを引き出している。「野菜の美味しさを表現するのにリアルな写真を使うのが有効だとは思うのですが、あえて版画風のイラストを使いました」と、デザインを手がけた遠藤礼奈さん。

「野菜のおいしさを引き出しながら、飲みやすくする加工技術について聞いたとき、写真をそのまま使わず、ひとつ手を加えて版画にするプロセスに似ていると思いました」。そこで版画風のイラストを採用。カゴメの思いや手の込んだ技術を伝えながら、この商品ならではのつぶつぶ感を版画風のテクスチャーで伝えられたらと考えた。

紙製飲料缶全体には、網目状のデザインがうっすらと施されている。これは社名の由来でもある「籠の網」。カゴメが商品にかける思いを伝えるべく、施したデザインだ。商品にかけるさまざまな思いが、パッケージの細かいところにまで込められている。

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ヨコハマ・パラトリ
エンナーレ2014

○AD/古川智基、荻田純
○D/向井翠

横浜・象の鼻テラスで開催されている「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014」は、障害者と多様な分野のプロフェッショナルによって生み出された現代アートの国際展。今年が、第一回目の開催となる。

ロゴマークはイベントを体現するかのように、文字の一部が欠けていたり、長さが違っていたり、さまざまな個性の書体が集まっている。「さまざまな人が集まり、パレードのように練り歩き、新しい芸術表現が生み出されるイメージです」と、ディレクションを手がけた荻田純さん。「参加する人も、展開される内容も多様で、個性豊かなプロジェクト。それを表現すると同時に、新しいイベントゆえに未成熟なところがありながらも、将来に向けた可能性を感じてもらえるロゴにしたいと思いました」。

本展の基盤にあるのは、アーティストやデザイナーと企業や福祉施設などを繋げたものづくりを行うプロジェクト「SLOW LABEL」。そのロゴと並行して使用すること、また将来的には海外での展開も見込んでデザインされている。

同展は11月3日まで開催中、展示コア期間は9月7日までとなる。

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クリープハイプ「エロ/二十九、三十」、カゴメ「つぶより野菜」ほか(この記事です)
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