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青山デザイン会議

時代感覚と言葉の価値

小島ケイタニーラブ/原田曜平/三角みづ紀

言葉は時代によって変化するもの。そして、その時代を反映するものです。よく指摘されるのは「若者言葉」です。「DQN」「ほかる」など世代間、あるいはネット上でのみ通じる言葉は、ときには意味が通じず、文法として間違っていることもあり、言葉の乱れと指摘されることもありますが、見方を変えれば、これもいまの文化の象徴と言えるでしょう。近年はSNSの浸透で、有名無名を問わず、個人の発言がさまざまな形でリツイートされたり、シェアされたりするようになっています。ネットニュースではタイトルが命。見た瞬間に興味が涌くか、涌かないかで記事へのアクセス数は大きく変わります。極端なことを言えば、クリックする前に、タイトルだけですべてが判断されてしまうことも少なくありません。よりわかりやすい言葉、よりおもしろい言葉だけが多くの人の目に触れていくようにも感じます。

一方で、「言葉のポエム化」も話題になっています。東日本大震災以後、感謝、幸せ、仲間、絆、夢などの言葉が社会へ溢れ、その言葉の裏側にあるものが読み取りにくくなっているという指摘があります。言葉が抽象的で、表面的になっている、ともいえるかもしれません。こうした言葉の現象をとらえながら、いまの時代ならではの言葉のおもしろさ、危うさについて考えてみたいと思います。

言葉とどのように向き合うか

小島 音楽家の小島ケイタニーラブです。歌手として歌詞も書きますが、詩人や小説家の方との交流を通して、朗読とのコラボも多くしています。言葉への考えが変わったのは、震災を機に始めた朗読劇『銀河鉄道の夜』が大きなきっかけでした。小説家・古川日出男さんが宮澤賢治「銀河鉄道の夜」を朗読劇化したもので、東北地方を中心に全国で朗読しているのですが、場所・空間・状況によって、同じ言葉でもその「響き」が変わっていくことを知りました。歌、朗読を問わず、自分の音を通して、たくさんの素敵な言葉たちを響かせたい、と思っています。

三角 詩人の三角みづ紀と申します。東京造形大学では映像を学んでいましたが、在学中に詩の投稿を始めて、以来詩にのめり込んで、卒業後も詩の発表を続けて、現在に至っています。詩作だけでなく朗読活動やエッセー執筆、絵本や書評、他ジャンルのアーティストとのコラボも行っています。

原田 博報堂ブランドデザイン若者研究所でマーケティングアナリストをしています。お二人とは違ってアーティストではないので言葉の捉え方もどちらかというと商業的だと思います。広告会社の中でも特殊な機関にいまして、若者向けの商品をメーカーさんと組んで開発したり、若者の実態を国内外で調査・分析したりしています。純粋に若者たちの変化を世の中に伝えたいというのもあるけれど、仕事を通じて発見した言葉をつくっています。最近では、20代を表した「さとり世代」が昨年の流行語大賞にノミネートされたり、衛生上の目的とは別でマスクを常用することを「だてマスク」と呼んだり、今年1月に「マイルドヤンキー」という言葉を作りました。お二人は普段、言葉とどのように向き合っていますか?

小島 僕は歌詞を書いています。詩は石碑に刻まれるように、時空をぽーんと超えられる力があると思うのですが、歌詞は時間が限定されているというか、もっと口頭伝承的な、フレーズをリレーしていく、フレーズを口ずさんだときに生まれる一瞬の永遠をリレーしていくものだと思っています。歌詞には言いたいことを100%詰め込まず、できるだけ隙間を多く設けるようにしています。これは朗読に音楽を付けるときも同じです。隙間の中で一つの言葉が、会場の響きや聴いてくれる人の体内のリズムと融合して完成していくイメージです。

原田 歌詞を書くときはターゲットを意識されていますか?

小島 以前は分析した時期もありましたが、今は降ってくる言葉と導かれるイメージからきちんと逃げないで丁寧に書く。そういうふうに気持ちを切り替えました。歌なので、まずは歌って気持ちよくないといけないと思うので、口に出して気持ちいい言葉を見つけて、それに少しずつ社会性をつけて、「自分以外の誰か」に聴いてもらえるようチューニングしています。頭で考えるとわかりやすい言葉や整合性から入ってしまうんですが、「意味がわからないけどグッとくる」ところを大事にしています。あとは思い描いたイメージをきちんと書けるように、日々語彙を磨き、言葉の練習をしています。三角さんはいかがですか?

三角 はい。小島さんと同じで私も余白は意識しています。作品は書き上げたらすぐに手放したいという気持ちが常にあって、さまざまな解釈をしてもらえるような言葉の選び方をしています。私の詩はとても短くて改行が多いのですが、「一見何もない」ぐらいの状態から読者に汲み取ってもらいたいという気持ちがあります。先達の詩人の方と話していると、作品だけでなく話す言葉もきれいなんです。言葉遣いはそのまま作品にも表れるので気を遣っています。あとは毎日詩を最低5行は書く習慣を続けています。

原田 僕は言葉をつくるのが必ずしも仕事ではないので、お二人ほどは向き合ってないと思います。若者たちの新しいニーズやトレンドを深く探り発見することを広告業界でインサイトと言いますが、この発見が僕の仕事です。例えば、クルマメーカーは「若い人はスポーツカーに関心が高い」という先入観で車種を推すのですが、実際に聞いてみると、支持されているのはミニバンなんです。低燃費で友達をたくさん乗せられてコンパクトなどの理由からです。そういうインサイトをクライアントや世の中に伝えるために重要だと思っているのが、言葉です。「さとり世代」などもどうやれば伝えられるかと深堀りしてできた言葉です。

小島 なるほど。ロジカルなんですね。

原田 そうなんです。でも90年代以降 ...

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