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デザインの見方

デザインに「不可能」なんて、ありえない

池澤 樹

    「Global」

    ◯企画制作:180/TBWA、San Francisco
    ◯ECD:Chuck McBride、Lee Clow、Peter McHugh
    ◯CD+C:Richard Bullock
    ◯ACD+AD:Dean Maryon
    ◯AD:Kai Zastrow、Tobias Eichinger
    ◯C:Boyd Coyner、Aimee Lehto、Crockett Jeffers

    「Japan」

    ◯企画制作:TBWA/JAPAN(180/TBWA)
    ◯ECD:John Merrifield
    ◯CD+C:高橋洋
    ◯AD:橋本慎太郎、中島寛文
    ◯C:藤田勝久

これはアディダスのImpossible Is Nothing. キャンペーンのポスター。モハメド・アリ渾身のガッツポーズにアリ自身の言葉を載せています。アリは不可能という言葉が嫌いでした。この言葉を同社のスポーツに対する姿勢と重ね合わせています。挑戦し続けること。不可能に立ち向かう勇気を持つこと。限界を押しのけ、限界を信じない人々を祝福しています。

アリはオリンピックで金メダルを獲得後、プロに転向します。1964年に世界ヘビー級王座のタイトルマッチに挑戦。絶対王者ソニー・リストンの、長身を活かした長いリーチから放たれる豪打を前になす術がないと、大方の予想はリストン優勢でした。しかし、下馬評を覆しアリは王者になります。1974年に王座奪還をかけて挑んだザイールの対戦では、敗色濃厚のなかジョージ・フォアマンに8R大逆転KO勝利し、王座に返り咲きます。この激戦はキンシャサの奇跡と呼ばれ、ボクシング史上屈指の名勝負として語り継がれています。

もう一人のイメージキャラクターはルーマニアの体操選手ナディア・エレーナ・コマネチ。14歳で挑んだオリンピックの舞台で史上初めて10点満点を獲得し、3個の金メダルを獲得しました。当時のルーマニアは状勢不安でまともな練習などできなかったと思いますが、個人総合で優勝した初のルーマニア選手となるとともに史上最年少での個人総合優勝を果たしました。

二人とも恵まれた環境にあったわけではありません。大きな壁が立ち塞がろうとも、自分を信じ、不屈の闘志で向き合いました。栄光の裏には人並み外れた、想像を絶する努力なくして、偉業を達成することはできなかったでしょう。だからこそ、このコピーには重みと深みが生まれるのです。

このキャンペーンが展開した2004年は ...

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