「これからの企業と生活者のコミュニケーションを変えるのは誰だ?」――宣伝会議 創業60周年の節目の号である本号では、メディア、テクノロジー、地域など、さまざまな切り口で、コミュニケーションの新しい可能性を拓いている40名あまりのクリエイターの活動を紹介します。なぜ、あなたはその活動に取り組むのですか? 自身の活動を通じて実現しようとしていることは何ですか? それによって企業のコミュニケーションはどう変わり、あるいは私たちの未来がどうワクワクするものに変わっていくのでしょうか?――これからのコミュニケーションを考えることは、これからの広告の形を考えることにほかなりません。彼らが語る言葉の中に、次なる広告の発想の刺激やさまざまなヒントが見つかるのではないでしょうか。あるいは、新しいコミュニケーションにチャレンジしたいときのパートナーとして、力強い味方になってくれるかもしれません。
tsug,LLC 久下玄(くげ・はじめ)
デザイナー/エンジニア/ストラテジスト。2009年にtsug,LLC創業。国内外企業のイノベーションプロジェクトを多数手がける。12年Coiney,inc創業参加。
デザインはコンセプトの翻訳作業
家電メーカーを経て2009年にtsug,LLCを設立した久下玄さんは、技術開発から製品デザイン、さらには事業戦略まで総合的に手がけるデザイナーだ。もともと家電メーカー時代はプロダクトデザイナーとして、主に生活家電の外面のデザインを手がけていた。しかし「表面的なデザインだけで売上げを変えることはできない」と、デザインに対してドライとも言える考え方を持っていた久下さんは、商品構成や戦略など、より根本的な部分から関わりたいと考えるようになっていった。
久下さんが考えるプロダクトデザインとは、「事業自体が持つ強いコンセプトと経営者のぶれないフィロソフィーを翻訳する作業」だという。「そこがしっかりしていれば、誰がデザインしても、ある程度いいものになる。逆に根本ができていないと、コンセプトづくりや新たなサービスモデルの開発から手がけることも多いです」。