坂本龍一・鈴木邦男『愛国者の憂鬱』
(金曜日)
坂本龍一さんと鈴木邦男さんの対談集『愛国者の憂鬱』はシンプルな表紙の手描き文字が目を引く。「実は、私が左手で描いた文字なんです」と話すのは、グラフィックデザイナーの長嶋りかこさんだ。
本書を読んだ長嶋さんは、「若い人たちに読んでもらいたい」と思った。しかし、そもそも坂本さん、鈴木さんは他の人より圧倒的に強い存在。そこにタイトルが並ぶと、あまりにもパンチがありすぎる。若い人たちに手にしてもらうためには、タイトルや作者が放つ“強さ”をバランスよく崩すことが必要だった。そこで、タイトルには主張しすぎない細めのゴシックを選び、手描き文字を蛍光色で重ねた。文字なのか、線なのかわからない感じを出したかったため、左手で描いたという。
“あの2人の密談”というスキャンダラスなイメージから、新聞を想起させるデザインにし、表紙にはボール紙、本文にはグレーがかったラフな紙を使用。帯の写真もあえて粗くした。本文はオーソドックスな文字組みだが、目次やあとがきは版面ぎりぎりの下揃えで組み、この2人ならではの危うさをさりげなく表現している。
シシド・カフカ「我が儘/Miss.ミスミー」
(Imperial Records)
○企画制作/AOI Pro.+アドソルト
○AD/長島慎
○PR/保坂暁
○D/望月圭介
○撮影/皆川聡
○レタッチ/望月洋輔
シシド・カフカさんの両A面シングル「我が儘/Miss.ミスミー」初回限定生産盤ジャケットは、全5000種類。統一ジャケットの上に、取り外し可能なポラロイド風写真が貼られている。サングラスをかけたり、ドラムを叩いたり...と、1枚として同じポーズのものはない。「この新曲を話題にしたい」という思いを受けて、AD長島慎さんが出したアイデアにシシドさんが賛同。「世界で1枚だけのCDを楽しんでほしい」と考え、自らスタッフを巻き込み、企画実現に向けて動いた。
一番の課題は、撮影方法。ポラロイドカメラで撮影すると時間もコストもかかる。そこでAD、フォトグラファー、レタッチャー、印刷会社全員で検討し、フォトショップのプラグインソフトを使用してポラロイド風に仕上げ、プリンターで出力するという手法を編み出した。撮影時間は6時間44分。撮った写真は7000枚。その中からシシドさんと共にセレクトした5000枚が店頭に並んだ。写真の下に本人のサインを添えたことで、ファンにとってはかけがえのない1枚となった。