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表現の武器「インサイト」を手に入れよう

心の盲点を突く!インサイト発祥の地 英国の名作広告

望月和人(東急エージェンシー)

「インサイト」の考え方は消費者リサーチと営業やクリエイティブを兼ねるアカウントプランニングとともに、1960年代のイギリスで生まれた。元祖インサイトの国の名作から、いまに通ずる視点を東急エージェンシー望月和人さんが解説する。

01 カルフォルニア牛乳生産者組合「Got Milk?」(1993年)
栄養価のアピールといった従来的な表現ではなく、「もし、牛乳がなかったら?」を考えさせる表現へ。「Got Milk?」は現在まで続くロングランコピーとなっている。

失ってはじめて大切なものに気づく

インサイトをうまく突いた広告の筆頭として挙がるのは、Goodby Silverstein&Partnersが手がけた、カルフォルニア牛乳生産者組合(California Milk ProcessorBoard)の牛乳購買促進キャンペーン「Got Milk?」でしょう。クイズに答えると賞金がもらえるラジオ番組の企画で、ある男性に電話がかかってきます。彼にとって、出題内容は得意分野。答えはすぐにわかりましたが、タイミングの悪いことに口の中がピーナッツバターサンドで一杯。モゴモゴとして何を言っているかわかりません。牛乳で流し込もうとするも、切らしている。あえなくクイズは時間切れとなってしまいます。牛乳があれば、答えられていたのに...というオチです。

このCMのプランニング時には、モニターを集め、牛乳がない状態で1週間過ごしてもらうという調査が行われました。モニターが不便に思ったのは「パンやシリアルがうまく飲み込めない」ということ。存在が当たり前になっているものが突然なくなったとき、人は何を思うかを調べる「剥奪調査」の手法を用いたのでした。

この系譜をつぐのが、Crispin Porter&Boguskyが2007年に携わったハンバーガーチェーン「バーガーキング」のテレビCM「Whopper Freakout」です。これは剥奪調査そのものをCMにした企画。店舗に隠しカメラを仕込み、1日「ワッパー(Whopper)」(同チェーンのハンバーガーの商品名)を売るのをやめたんです。すると来店者は怒って店員を問いつめたり、失望した表情を見せたり。リアルな反応を示すことで、深い愛着を持たれているブランドだと訴えました。「失ってはじめて大切なものに気づく」という、人間の根源的な心の動きに基づく企画ですね。

02 米バーガーキング「Whopper Freakout」(2007年)
バーガーキングのハンバーガー「ワッパー(Whopper)」生誕50周年キャンペーンとして、店頭から「ワッパー」を" 排除した" 企画。「Freakout」とは、「ひどく興奮して訳のわからないことをわめいている」状態で、ワッパーを食べられなかった来店者は怒り心頭。その分、あって当然だったワッパーの存在を改めて感じることになった。

集中力が高いほど気づかない

3つめはロンドン交通局が展開した交通安全キャンペーン「Test Your Awareness」。「Do The Test」「Whodunnit」という2本のテレビCMが代表的です。企画制作はWCRSという現地のエージェンシー。

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