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ディレクターに聞く キャスティングの裏側

アドフェスト受賞で学んだ ディレクターとしての覚悟

箱守恵輔

演出においても、役者の演技においても重要なのは、評価を気にして手法に凝ったりするのではなく、素直にストレートに伝えること。そう話すディレクターの箱守惠輔さんは、そのためには「自分らしくやる覚悟」を持たなければらなないと考える。

「魅せる」よりも「伝える」

約8年間CM制作会社に所属し、昨年独立したディレクターの箱守惠輔さん。独立のきっかけになったのは、アドフェスト2012の新人ディレクター部門で、演出を手がけたショートフィルム「Time SpentTogether」がグランプリを獲得したことだ。

これはある男性が家族と共に訪れた京都旅行の思い出を通して、家族との向き合い方、家族の幸せのあり方を描いた作品。「新しい表現や、ギミックよりも伝えたいことをしっかりと描いていこうとして取り組んだ作品です。グランプリを獲得したことで、自分が感じたこと、伝えたいことを素直に伝えることで最も自分らしい作品になり、それが演出において一番大切なことだと教えられました」と箱守さんは話す。

この作品では家族を丁寧につくることを心がけ家族を演じた役者に手紙を送った。手紙には映像を通して自分が何を伝えたいか、どんな考えを持っているかを書き、その後実際に会って、どんな家族にしていきたいのか意見のすり合わせを行った。「まず役者の方に自分の考えを理解してもらい、役者の方自身で考えてもらうことが大切だと思っています。そうして出てきた演技に対して、自分が思ったことを伝える。その積み重ねが役者の自然な表情として表れると信じていたからです」。

自分らしくやる覚悟

キャスティングにおいて重視しているのは、役者が評価を気にし過ぎずに自然にできるかどうか。

10月に八王子にオープンした商業施設「セレオ八王子」のCMは、何気ない1人の女の子の成長を描いている企画だ。そのため、オーディションでもスタッフを気にすることなく、自然な表情が魅力的な役者を起用した。

評価を気にして表現手法に凝った作品ではなく、自分が伝えたいことを素直に映像にすることで相手に届いた経験から、役者も評価を気にせず自然に自分らしくやる覚悟が大切だと箱守さんは考えている。「役者さんはなるべく自然でいて欲しいと思っています。その人から自然に出る魅力をどう切り取り、どう伝えるかを考えることが、いまはとても楽しいです」。


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